特別対談

左より広尾学園校長:南風原朝和先生(東京大学名誉教授)、広尾学園小石川校長:松尾廣茂先生(前広尾学園教頭)

2021年4月よりスタートした広尾学園小石川中学校・高等学校。対談では、広尾学園校長の南風原朝和先生(東京大学名誉教授)と、広尾学園小石川校長の松尾廣茂先生(前広尾学園教頭)がコロナ禍でスタートした学園の今とこれからの取り組み、両校の連携のありかたなどについて語り合った。

文教地区、小石川という地の利を生かして

南風原:2021年4月に広尾学園小石川がスタートして早9カ月となりますね。いかがですか?

松尾:コロナ禍でのスタートでしたが、子どもたちが笑顔で生き生きと学校生活を送ってくれているので大変嬉しいです。

南風原:それは良かった。文教地区の“小石川”という立地を生かした取り組みを多くされているようですね。文京区は私も25年通いましたので大変親近感があります。

松尾:例えば、文京区にある「公益財団法人和敬塾」と教育連携させていただきまして、総敷地7,000坪の和敬塾さんの自然豊かなグラウンドを使わせていただいたりもしています。また和敬塾さんの歴史ある重厚な建造物を部活動で利用させていただくなど、子どもたちにとって良い刺激となるこの環境を学園としておおいに活用させていただいております。

南風原:和敬塾も文京区ですものね、まさにこの立地だからこそできる学びですね。

松尾:はい、そう思います。そしてここは住宅街にある学校なのですが、地域の皆さんたちとの距離も非常に近く、散歩している方と気軽にお話をするなど、いい関係性を築きつつあります。

南風原:地域の皆さんに温かく受け入れられ、サポートしていただくということはとても大切なことですね。

松尾:本当にそう思います。

広尾学園との確固たる連携のために

南風原:去年、学校がスタートする前にも松尾先生と対談しましたね。昨日、改めてその記事を読み返してみたんです。そうしたら、広尾学園と広尾学園小石川は共通の教育目標を持ちながらも個性を持つ、という話をしていました。そのあたりは今、着実に実行できていますね。

松尾:そうですね。広尾学園の皆さんとは隔週で、「小石川プロジェクト会議」を行い、両校の情報共有を徹底しています。同等の教育レベルが保てるように、お互いの取り組みや教職員の意識統一など、高い教育水準を保ちながらもさらにより良い方向へ進めるように、日々連携を深めています。

南風原:広尾学園小石川は初年度から都内最多の受験者数を記録して大いに話題になりましたね。それだけ保護者の皆さまから大きな期待を寄せられている、ということですね。

松尾:多くの皆さまに受験していただけたのは、ひとえに広尾学園の存在が大きかったと思っています。広尾学園が姉妹校を設立する、そこに保護者の皆さまが大いなる期待を寄せてくださった。だからこそ、私たちはその期待に応えられるように、さらに期待を上回る学びを築いていかなければいけないと教職員一同身を引き締めて頑張っています。

生徒や教職員と想いを一つに

南風原:校舎入口にある松尾先生の手書きのメッセージを拝見しました。あれは、どんなタイミングで書かれるのですか?

松尾:学校説明会や学校行事など、節目節目に子どもたちに伝えたい想いを書かせていただいております。ただそれは、保護者の方や子どもたちに向けてだけではなく、教職員全員へのメッセージでもあるんです。とても嬉しいことに、わが校の教職員たちのモティベーションはとても高く、情熱をもって子どもたちに接してくれています。そのモティベーションをさらに高めるとともに、高い指導力と教育水準の学校であることを“すごい”ではなく“当たり前”にできるようにしたいと思っています。

南風原:そういう松尾先生の想いが伝わっているからこその子どもたちの笑顔であり、学校のとても良い雰囲気なのですね。素晴らしいです。

松尾:ありがとうございます。広尾学園は港区にあり、広尾学園小石川は文京区にあります。とても教育熱心な方が多い、ということも両校の共通点ですが、それらお互いの良いところを特色として伸ばしつつ、しっかりと情報連携しながらさらに高みを目指し、より良い学びが得られる場にしていきたいと思っています。

南風原:小石川の地の利といえば、約90年の歴史をもつ東洋学の専門図書館である「東洋文庫」とも連携が生まれているのですよね。

松尾:そうです。ただ展示を見に行くだけではなく、ありがたいことに学芸員や研究員の皆さまから、企画展や展示品について特別講義をしていただいたりもしますし、第二の図書館として活用させていただこうと思っています。生徒たちには本校の教職員だけではなく、専門的な知識をもった方々と触れ合う経験をもっともっとさせてあげたい。そのためにもこの学校を基地として、どんどん外へ外へ活動のフィールドを広げていく予定です。

南風原:素晴らしいですね。あと、特別活動などを広尾学園と一緒に行う試みも始まりましたね。

松尾:はい。生徒会活動などもそうですが、委員会の名称なども統一し、部活動では対抗戦を行うなど、どんどん絆を深めたいと思っています。広尾学園の特色の1つであるキャリア教育プログラムでも、これから宇宙天文講座、さらには第一線で活躍されている研究者の皆さんが集結するスーパーアカデミアでも広尾学園の生徒たちと一緒に学ぶことになっています。現在、小石川では2つのコースがありますが、コースの枠を超えて生徒が交流することで、さらなる多様性が生まれると思っています。さらにそこに広尾学園の皆さんとの交流が深まれば多様性がさらに広がります。本校の教育理念は「自律と共生」ですが、まさにそんな能力が多様性の中で自然と育まれていくのではないかと思っています。

南風原:ますます楽しみですね。これからも切磋琢磨しながらお互いの良さをさらに高めあい、共に頑張っていきましょう。

松尾:これからもどうぞよろしくお願いいたします。本日はお越しいただきまして、本当にありがとうございました。

南風原:ありがとうございました。

(取材日 2021年12月)