特別対談 #1

左より広尾学園校長(東京大学名誉教授):南風原朝和先生、 広尾学園小石川校長(前広尾学園教頭):松尾廣茂先生

2021年4月より新たにスタートする広尾学園小石川中学校・高等学校。対談では、現広尾学園校長(東京大学名誉教授)南風原朝和先生と、広尾学園小石川校長(前広尾学園教頭)の松尾廣茂先生が広尾学園小石川とこれからの時代に必要とされる教育について語り合った。

南風原:2021年4月にいよいよ、広尾学園小石川中学校・高等学校がスタートしますね。これまで進めてきた村田学園と広尾学園の教育連携が、広尾学園小石川中学校・高等学校という形になるのですね。

松尾:2020年現在、広尾学園から教職員が8名着任し、他の進学校から受験指導に実績のある教員が4名、さらにはインターナショナルコースを設置するため、広尾学園のインターナショナルコースで指導実績を築いてきた外国人教員たちが合流します。新旧教職員が手を携え、一丸となって、この広尾学園小石川スタートへ向けての準備を進めております。

南風原:松尾先生は順心女子学園から共学化して広尾学園へという、新しい学校づくりに直接携わられたという経験をお持ちなので、今回の村田女子学園から広尾学園小石川へという変革においても、そうした経験が大いに生かされるに違いないと思っております。

松尾:順心から広尾への変革においては本当にさまざまなことを経験し、学びましたが、一番大切なのは教職員の意識改革だったと思います。教職員の指導のあり方が、いかに生徒たちの成長に影響を及ぼすかを痛感しました。子どもたちの期待に応えるために、教職員は何をすべきか、この意識の共有が広尾学園の教育の土台にあったと思います。

南風原:広尾学園小石川のスタートにあたって、村田女子という伝統のある学校からの学校改革に期待してくださる方もおられると思いますが、どのような展望をお持ちでしょうか。

松尾:ますます流動化が進む国際社会で生きてゆく生徒たちには、チャレンジする姿勢が求められます。自分はやればできるんだという自己肯定感を高め、その舞台が国内だけではなくて世界に広がっている。自分の強みを生かして社会に貢献する、自分の頑張りが他の人の幸せにつながる、そうした気概を持つ人材が育つ土壌にしたいと考えています。そのためには、どういう状況に直面しても前を見続ける、チャレンジを続ける意気込みが必要です。そして、それは一人の力では継続できないことでもあります。「自律と共生」という広尾学園小石川の教育理念は、そんな時支えあう姿を表してもいます。

南風原:私も文京区の大学に25年以上勤務していたので、大変親近感があります。文教地区にある環境に恵まれた学校だと思います。広尾学園も非常に都会的な恵まれた立地ですが、小石川には港区にはない良さがあると思います。

松尾:とても落ち着いた雰囲気で、文京区も港区同様、教育に対する関心が高く、小学生の半数以上が中学受験をするというのが特徴のひとつです。広尾学園小石川を選択肢に入れてもらえると嬉しいですね。

南風原:保護者の教育に対する意識が高いのですね。東洋文庫というアカデミックな施設も近く、環境は申し分ないですね。

松尾:南風原先生は大学側の視点から中等教育のあり方についてお話しされる機会も多いと思いますが、これからの学校についてどのようにお考えでしょうか。

南風原:これから求められる力、というようなことをよく言われるのですけれども、社会にはさまざまな人のさまざまな力が必要になります。ですからこれからは、「○○力」こそ不可欠だというような言い方はどうかと思います。多様な力が必要なのです。大学には国内はもとより世界中の高校から学生が集まってきます。自ずとさまざまな学校のカラーが混在します。それぞれの高校が目指すものがあって、その成果を身につけて大学に集うのだと思います。その上で、それぞれの学生に共通な部分と同時に多様性・独自性がある。社会は「○○力」単独ではなく、さまざまな人のさまざまな力が融合して大きな力を生み出すのだと思います。今回のコロナウィルス禍のような世界的な危機を乗り切るためにも、それぞれの生徒が強みを見つけること、そして、広がりを持つことが必要だと思います。

松尾:本当におっしゃるとおりですね。

南風原:広尾学園小石川は広尾学園と同じコース・カリキュラムでスタートしますが、両校が共通の教育目標を持ちながらも個性を持つという構造が、この連携が目指すものということでイメージしています。

松尾:その個性や多様性を具現化するために、小石川の定員120名というスケールを強みとして生かしていきます。コースこそ2つに分かれていますが、生徒同士、生徒と教職員が信頼し合い、刺激しあう学校になるのです。本科コースにいても隣のインターナショナルコースの仲間と語らうというように。

南風原:多様性とともに流動性、柔軟性が育まれるということですね。コース間の交流は大事ですね。

南風原:それぞれ別の学校だったらできなかったことが、協力連携することでできるようになり、また広がりを持つことは非常に楽しみです。生徒たちはそういうメリットを享受することができます。おそらくこれまでになかったスケールメリットが出てくると思いますね。

松尾:広尾学園小石川のスタートは広尾学園のスタートとは違って、先行モデルとしての広尾学園があるので、塾の先生、受験生保護者の皆様も期待をしてくださっているということを強く感じています。これからは、ますます新しいことに適宜対応できる柔軟な姿勢が求められようになると思います。本校は、新しい小石川に期待して来られる生徒や保護者の皆さんの顔を思い浮かべて、その期待に応えられる学校づくりを進めて行きたいと思います。ぜひ受験生・保護者の皆様には一度ご来校いただき、本校の教育活動をご覧いただきたいと思います。

南風原:両校、お互いに切磋琢磨しながら進んでまいりましょう。